娘には到底わからない

子供の学芸会があったので、大阪から両親が来た。

上の子が卒園、下の子は初めての学芸会だった。

私と両親との関係はさておき、孫のことは目に入れても痛くないぐらいに好きな二人なので、終始楽しそうであった。

滞在中、両親と本格中華を食べに行った。四川風の激辛坦々麺を平気な顔をして父親が食べていた。辛いものがかなり好きということを初めて知った。

父は一度座ると頑ななまで動かない酒飲みで、母や私にあれをとれだの、酒を入れろだの昔から甘えてくる人だった。その態度に、成長した私は違和感を感じ続けていた。なんでそんなんせなあかんねんとことあるごとに反発し、その度に「お前が女やからや!」と当たり前のように暴力的な持論でねじ伏せられた。そんな父の価値観や態度を軽蔑すらしてきた。だが、母はそんな父から逃げることもなく、もうすぐ金婚式を迎えようとしている。

 

 我が家で父の熱燗を作りながらありったけの嫌味を込めて、「父さんは、母さんが先に死んだらほんまに大変やねえ」と伝えると父は「おかんは俺より先には死なへんのや」と呟いていた。数十年前に母が「この人には、私だけなんよ」と言っていたことをふと思い出したりした。二人の間の歴史や愛情など、私にはわかるはずもない。正直二人がなぜそこまでして一緒にいられるのかと本当に不思議だ。両親が帰った後、夫婦の間に横たわる定義できない関係性について考えてしまった。関係性の正しさとはなんだろう。共依存でもなんでも、二人が納得しているのであればそれで良いと思ってしまう私も、ずいぶんと丸くなったのかもしれない。

物理的に離れているから、他人事とて見れるようになっただけなのだろうか。父と母という人間について、娘であっても本当にわからないことばかりだ。